売るべき商品がなければ戦えない。
住宅は請負であり商品ではないという間違った表現もあったが、これは正しくない。
お客様がお金を出して購入されるものはすべて商品である。
住宅が商品である以上「らしさ」を持ちたい。
自然派住宅でも高断熱高気密住宅でも低価格住宅(ローコスト住宅)でも何でもよい。
誇りを持って提供できる商品なら最高である。
自信がなく心の中に偽りがあれば、お客様にもわかってしまう。
生きる術だけの商品ではいずれ破綻をきたすので、しっかり決め込む必要がある。
品質・性能・保証・CSの時代に入った現在、性能の実現は当然のこととしても、これだけでは競争に勝てない。
デザインを魅せるレベルに磨く必要がある。美しいデザインは人をひきつける。
勝ち残るには知恵と技術力を使った商品が必要である。
このときに重要なのは工務店・ビルダーが大手住宅会社や量販住宅会社と同じ商品をつくっていたのではダメだということである。
その地域で気候風土も文化も住まいの考え方も異なっている。
工務店・ビルダーは地場企業としてもっと地場のことを知らねばならないし、それを活かした住宅をつくるべきである。
最近の住宅ではローコスト化努力と,和(日本の和、なごみ、やすらぎ)への取り組みが目立っているが、住宅の品・質の良さが一目で予感できる魅せるデザインの家ができると最高である。
デザインはステイタスである。
魅せる外観、魅せる内観、魅せるエクステリアを実現できるよう努力をすることである。
良い住宅は
①性能・機能、
②意匠・デザイン、
③プラン、
④材料、
⑤価格(コストパフォーマンス)を満たし、
⑥良品質の施工により実現する。
①~⑥のひとつでも「らしさ」の魅力があると強力な武器になる。
「らしさ」の優位点はどんどん強化してほしい。
改善点でなおす必要があるものは思い切って改善してほしい。
エリアでの売れ筋商品は何か、
競合相手の売れ筋は何か、
自社の商品の位置は何か、
どう差別化できるか真剣に分析して「らしさ」をあみ出してほしい。
ハード・ソフトのいずれでもよい。
とにかくお客様が評価するもので、「らしさ」による競争力のあるものをつくり出してほしい。
価格で優位性を出すか、
デザインで差別性を出すか、
性能で違いを出すか、
材料の特質で特長を出すか、
またはそれらの複合で出すか、
いずれであっても他社とは一味も二味も違いのある「らしさ」を出してほしい。
この違いが出せるかどうかで運命が決まるといっても過言ではない。
お客様が認知・評価されるものは一つではないので、自社が一番戦える強いところを強化し、それをアピールしてほしい。
常にお客様に視点をあわせ、考え、組み立てることを続けていけば必ず成果は出てくるものである。
「良い商品は売れる」は真実ではない。
よい商品をお客様に認知・評価されるようにアピール・演出しなければ売れるものではない。
よい商品は売れるというのは錯覚である。
また性能だけで売れると思っている人がいるがこれも錯覚である。
価格帯での住宅の品があることを忘れてはいけない。
価格的に高めの住宅は、それにふさわしいデザインなり雰囲気が必要である。
また工法で売れるというのも錯覚の一つである。
お客様が求められているものが何かをよく理解しておく必要がある。
お客様が求められているのは住まいやすい住宅であり工法ではない。
特に住宅が「建てる技術」から「住まう・暮らしの技術」へと変わっている現在、求められているものは暮らしの安全・健康・快適・効率・利便性が実現でき、かつ美しいものである。
商品なくして販売なしであることを忘れず努力してほしい。
本気で考え、本気で取り組むと必ず道は開けてくるものである。
(2017年5月25日 日本住宅新聞掲載)