1、敷地環境調査の必要性
設計するにあたり、お客様の敷地の状況を知り最適のプランを作成する必要がある。
お客様が建築される土地は世界で一つしかない。お客様の土地実測図や、方位だけで簡単に設計できるものではない。
通常、敷地調査というものが実施されているが、それは真のCS(顧客満足)実現にはほど遠いものである。工務店・ビルダーや大手の住宅会社がやっている調査の内容やレベルはほとんど同じもので、敷地現況と法規調査と地盤調査しかしていないといえる。
これらの調査は当然の必要条件であるが、これだけでは十分条件ではない。
特にお客様の「生命を担保として求められる家族の幸福の城」づくりのプロの仕事としてはまったくCSをないがしろにしたものとしかいいようがない。
お客様の土地は世界唯一無二の土地であり、その土地が持っている特性は他の土地とは異なる特性をもっているものである。その特性を知らずして設計することは本来不可能である。
敷地の特性とは敷地が持っている環境特性のことである。水道・ガスの配管がどうなっているかの調査は基本のことである。
敷地の環境とは、接道する道路や道路からの高低差からどういうランドプランニングをするとよいか、隣接する家屋との関係はどうなっているか、トイレの臭いや台所のにおいは配置によって大影響を受けるため、しっかり確認をしなければならない。
また隣接家族はもちろんお客様のプライバシィも守らなければならず、窓の位置や目線範囲もよく確認し、エコキュートの位置も十分に配慮しなければならない。
さらに敷地周辺に悪環境があるかどうかもしっかり確認する必要がある。近くからの騒音や悪臭があるかどうか、また車による振動があるかどうかも把握しなければならない。
またよく陽があたり風通しが良ければ快適な住宅ができるため、陽のあたる状況(光の道)はどうか、また風通し(風の道)はどうかなども十分に確認する必要がある。
さらに、建てる住宅と近隣の街並みも配慮しなければならない。
良い環境をつくるためには街並みも大切である。
ヨーロッパやアメリカの都市を見たときにいつも痛感させられることは、それらの国が環境を実に大切にしていることであり、環境が財産であるということである。
そのためお客様が建てられる住宅も環境に映える家にしなければならない。
同じくお客様の住宅内部から見た景観も十二分に配慮されなければならない。
新しい土地を求められたお客様には追加して生活環境調査をすると喜ばれる。
施工するにあたっての搬入路やクレーン使用可能かなど、また造成の有無なども調査するのは当然である。
調査するにあたって、お客様の立会いもお願いして実施するとよい。
お客様から近隣関係のことや、保存する植栽や外構の確認など建設予定地でしっかり確認し、世界でたった一つの素晴らしい「家族の幸福の城」を設計・施工するべきである。
2、敷地環境を配慮した住宅建設を
調査結果は必ず「敷地環境調査報告書」としてまとめあげなければならない。
このときに必ずデジタルを活用して写真やわかりやすい説明をつけた報告書にする必要がある。
言葉だけの専門的な説明ではお客様は理解できるものではない。
そして、できあがった調査報告書に基づき、きちんとお客様に敷地が持っている環境特性を説明するべきである。
これらの調査することは住宅会社としての必要不可欠な責務であるが、過去を見てみると、それが十分になされず無責任に見過ごされてきたか、またはそんな面倒なことなどしなくても住宅は建てられるし、この程度で十分だと軽視されてきたことなどがあり甚だ残念である。
この専門的な敷地環境調査報告書に基づいてヒヤリングを行い、プランニングを行うのである。注文住宅であろうが規格住宅であろうが、また建設費が安かろうが高かろうが敷地環境を十二分に配慮された住宅でなければならない。住宅はお客様が長年月生活されるものであり、暮らしやすい[家族の幸福の城]であることを忘れてはならない。
(2018年10月25日 日本住宅新聞掲載)