1、想いとこだわりを聴くヒヤリング
敷地環境調査により敷地の環境・条件を知ることと、心を込めたヒヤリングを行うことで、お客様の最適のプランニングを行うことができる。
敷地環境調査の次に実施する重要な行為が設計ヒヤリング(ご要望確認)である。
住宅はお客様が大金を投じて、1日24時間、1ヵ月30日間、1年12ヵ月間、それを35年間以上住み続けられるものである。そのため、構造や材料の特性、意匠・デザイン、性能・機能、住まい方などの住宅の意味がよくわかった設計者がヒヤリングをし、設計すべきである。
WHO(世界保健機関)が求める住宅の必要機能は「安全・快適・健康・能率」であるが、さらに「利便性」を加える必要がある。その必要機能を実現し、お客様の大切な敷地への対応力があり、またお客様の「願望実現・不満解消」の幸福の城としての夢~求められる住宅のコンセプト~を実現し、なおかつ美しい住宅をつくらなければならない。
もちろん限られた予算の中で実現するわけだから、お客様の希望をすべてきくものではない。
2、ヒヤリングの内容とやり方
ヒヤリングとはヒヤリングシート(ご要望確認シート)や写真・資料に基づいて、専門知識と経験のある設計者がじっくりと時間をかけて、お客様と楽しみながら住まいづくりの想いを聴き出すものである。
①「敷地条件を配慮したプランニング上の注意」~門・塀・ガレージ・建物配置・玄関の位置などのランドプランニング(敷地配置計画)での注意ポイントの把握
②「お客様の生活条件を配慮したプランニングのポイント」~健康対応や住まい方条件による住宅の必要機能や空間・材料などの設計注意ポイントの把握
③「今現在と未来にわたるまでの住まい方の配慮すべきポイント」~予想される5年後、10年後、20年後のライフステージやライフスタイルのイメージの確認によるプランニングでの配慮ポイントの把握
④「デザインや品質・性能の希望条件」~住宅の基本性能で配慮・重視したい設計ポイントの把握
⑤「内部の具体的な空間の希望条件の確認」~各部屋・部位ごとの尊重配慮すべき設計ポイントの把握
⑥「ZEHやその他性能の有無とその希望条件の確認」
など、各分野にわたって十分にヒヤリング・確認しなければならない。このヒヤリングなくして、お客様の夢をかなえるベストプランはできない。
ヒヤリングの時にお客様に対してわかりやすいツール(写真や資料など)を使って、よく説明と確認をする必要がある。言葉だけでは絶対に理解できるものではなく、お客様とヒヤリング者との間に認識ギャップが発生し、将来のトラブルになる可能性があるため、必ずツールや実物による説明・確認をしてほしい。
できればこのヒヤリングを行う時に設計者がエスキース(概略スケッチ図)で確認していくと、お客様の想いを具体的に確認できる。
ヒヤリングで注意をしなければならないことは、家族全員の思い・想いを聴くことである。主人だけでのヒヤリングは100%クレームになるので、必ず全員の希望を聞くことである。
特に奥さんの住まいに対する希望を詳細に聞きださなければ、住みやすい良い住宅はできない。
このヒヤリングには時間がかかる。一時間くらいで簡単に終わるものではない。
しっかり聴くことでプラン変更がなくなり、プランの確定が早くなる。
ヒヤリング行為を住宅と住生活のことがよくわからない営業マンがやるのは、本来のお客様満足の家づくりとはいえない。専門知識もなく生活経験の乏しい営業マンだけでヒヤリングをすることは大変失礼な行為である。
質の高いヒヤリングを行うことで、「生命を担保にして求められる家族の幸福の城」実現が近くなる。
またお客様が「自分達の家をつくってくれる、まかせてもよい」という安心・信頼感が出てくるものである。
(2018年11月25日 日本住宅新聞掲載)