良品質施工をする場合に不可欠なことが職人・協力業者のパートナー化である
工務店・ビルダーにとって、職人・協力業者は社員ではないが、ビルダー機能の分担であり、重要なパートナーであることを忘れてはならない。単なる元請・下請けの関係ではない。
20世紀と、さらに今でも品質も性能もCSも関係なく、ただ仕事を「こなす」だけで住宅ビジネスが成り立っているが、21世紀の今日、いつまでもそれが通用することはない。見た目は立派に見える家も本当は品質不安な家が多いといっても過言ではない。今、品質に責任を持てる住宅会社・工務店がどれだけあるか心配である。現場が汚いなどは品質以前で、もってのほかである。これはすべて過去の「こなし」時代の産物であり、良心に恥ずべき行為である。
住宅ビジネスに属しているすべての人は、住宅と住宅ビジネスの意味をもう一度考え直す必要がある。良品質施工をしなければ使命を果たせないし、欠陥住宅であることを知りながら儲けることは背信行為であることを強く認識してほしい。
昭和43年以来の住宅バブル好景気が住宅ビジネスにおける倫理欠如をもたらした直接の原因ではあるが、これが同時に職人・協力業者がパートナーであるべき本来の姿を破壊したといってもよい。現実は真のパートナーのチームではなく、あくまで元請・下請けの関係である。中には良好なパートナー関係を構築している素晴らしい工務店もあるが、大半はまだ真のパートナーになっていない。
2CS利益実現共同体
工務店と職人・協力業者の関係がお金だけであるのはまずい。工務店と職人・協力業者は志を同じくするCS実現共同体で、全身全霊でお客様の「家族の幸福の城」づくりに励まなければならない。この真剣な住まいづくりの行動が評価され、お客様の紹介やご近所の方からの受注につなげることができる。さらに心と思いを込め良品質施工を心がけていけば、お客様の感動と紹介の輪が広がっていく。それがまた利益を生み出し、善の循環になる。
工務店と職人・協力業者はCS実現共同体であり、利益実現共同体でもある。工務店を中心にして職人・協力業者の双方向コミュニケーションによる円運動が本来の形である。図形の双方向矢印も工務店と職人・協力業者は協働・共感・共有のCS・利益実現共同体であり、合目的のチームであることを示している。協働は、それぞれが別個に勝手な行動をするのではなく、それぞれの立場で、同じ考え方(理念)に基づき、同じ方針で、同じ目的に向かって、協力して働く行動をいう。工務店の営業・設計・工事の社員も、職人も、協力業者も同じベクトル(合力)でCS実現をはかるのである。
この協働・共感・共有のチームができて初めて本物の工務店になれる。本物のチームができれば、良品質は黙っていてもできる。それはお互いが同じ理念を持ち、良識を持って参画しており、責任を持って施工するからである。パートナー化の職人・協力業者は信頼のチームであり、自主・連帯と自己責任が明確なチームである。
3真のパートナー化を
このため工務店も職人・協力業者もお互いに真剣に選ばなければならない。工務店は住まいづくりの思想・哲学を熱く語り、これに賛同してくれる職人・協力業者を選ぶ。一方、職人・協力業者も共に歩むのに信ずるに値する工務店・ビルダーかどうかを厳しく選択しなければならないのである。
このパートナーに参画する職人・協力業者が守るべきことは、①CS・利益・運命共同体意識で、②感動される家づくりを目指し、③工事三大条件(現場きれい、工期厳守、残手直し工事0の引渡し)を遵守し正しい施工(設計・施工基準)を行い、④自主検査―責任施工を徹底し、⑤好印象マナーで近隣配慮をする。そして、⑥何かがあればスピード対応し、⑦チーム行事に積極参加することである。
パートナー化が進化したチームが出来上がれば負けることはない。真のパートナー組織ができるよう努力すべきだし、また価値はある。
(2020年2月 25日 日本住宅新聞掲載)