1.求められるコストダウン
今はコストアップをどう防ぐか、職人をいかに確保するかということが課題になっているが、勝ち残るためにはコストダウンをして競争力と付加価値をつけることが最大急務になっている。
利益を上げるには
①売上げをあげる、付加価値をつける、
②仕入れを下げる、出ずるをおさえる、
③効率を上げる~生産性を上げる、回転率を上げる、回収率を上げることが必要である。
これからの時代は「原価+経費+利益=売価」の原価積み上げ方式では通用しない。「売価-(経費+利益)=原価」の時代である。原価を積み上げての売価であればお客様の選択からもれてしまう。どんなことがあっても競争に勝つためには、良くてコストパフォーマンスの高い住宅(低価格の意味ではない)の実現が必須である。そのため、コストパフォーマンスを高めるコストダウンの努力は必要不可欠である。
2.コストダウン以前にコストの明確化を
コストダウンを考える時には、
①戦略としてのコストダウン(知恵)と、
②戦術としてのコスト管理(先行管理)の二面を考える必要がある。
しかし、今の工務店にはコストダウンとコスト管理を考える前に、前提条件をクリアーする必要がある。先ずコストを明確にすることである。見積をとり、積み上げたものがコストだと誤解している。実際の原価がわかっていない。材料はいくらか、工賃はいくらか、また歩掛かりはいくらかなど皆目わかっていない。情報をもたないため業者の見積を信じるしかないのだが、これではコストが高くてどうしようもない。
工務店では標準仕様書が明確でないところが多い。そして積算基準(拾い出し基準と単価明細)もないところが多い。真剣に経営をしているつもりでも大ザルが現実である。しかも悪いことには、着工前に完成した図面と完全な仕様が決められず、事前発注もされていない。これでは原価が高くなるのが当たり前(3~15%up)で、受注売価が低ければ目も当てられない。先ずコストを明確にしてから、コストダウンの取り組みに入ることである。
3.コストダウンは努力の結晶である。
コスト問題に取り組むには、①仕事の品質を上げればコストは下がる、②品質のバラツキを防止するシステムを構築する、③作業の先行管理を徹底する、④発想の転換―やり方を変える―の原則を守る必要がある。
コストダウンをやるにはⅰ意識を変える、ⅱ方法を変える、ⅲ徹底する、妥協しないことが大切である。コストダウンは情報と知恵と勇気と根気による真剣な戦いの努力の結晶でもたらされる。
コストダウンを行うには
①直接原価の低減、
②間接原価の低減、
③品質(仕事・作業)の向上、
④生産性の向上、
⑤手続きの省力化が大切である。
直接原価の内訳はa材料費、b労務費、c外注費、d仮設工事費、e機械等維持費などであるが、大半はa・b・cで決まる。工期短縮は直接・間接のコストダウンにも大きな影響を与える。またミス・ロス・ムダの排除や二重作業の排除もコストダウンに好結果をもたらす。
直接・間接のコストダウン実施方法は
1構工法・技術革新~部品化、材料・素材開発
2設計革新~プランニング、設計手法の変革
3施工革新~施工の合理化、職種の再編成
4資材・流通革新~資材流通の短縮化、ジャスト・イン・タイム(JIT)のデリバリーの工夫
5営業革新~営業システムの変更、営業生産性の向上
6業務革新~管理システムの合理化、業務の再編成
7上記に基づく仕入れ
ネゴ(交渉)の強化~3・4の外注・資材などのコストダウン交渉などである。
仕様を標準化し、コストを明確にするだけでコストは大きく下がる。真の価格を知らないことがコストダウンの妨げになっている。
コストダウンの天敵は情実である。今までのしがらみを捨てる勇気がなければ上辺だけのコストダウンになり、真のコストダウンはできない。
コストダウンできない企業に明日はない。
(2020年3月 25日 日本住宅新聞掲載)