① CS実現が基本
昔、大手住宅会社社員時代に長期滞留債権の回収を6ヶ月間担当したことがある。聞こえはよいが大クレームの解決係である。毎日お客様の怒り、悔しさ、涙を見てきた。とても辛いことではあったが、それはお客様の比ではない。家族崩壊まで目の当たりにして自社の無責任な担当・幹部に対して怒りに燃えたものである。その時に学んだのが「住宅は生命を担保にして求められる家族の幸福の城」であり、「住宅は仕組みや、やり方のシステム産業」である。その時から50年以上もCS実現と仕組みづくりが大切だといい続けてきている。
今では嬉しいことにしっかり現実をとらえ、住宅業界の旧い間違った通念を打破し、住宅ビジネスの原点に戻り、CS→CD→CT実現をテーマにして成長してきている工務店・ビルダーが誕生している。
いろいろな考え方ややり方があってもよい。しかし、絶対やってはいけないことは生活者(ユーザー)を裏切ってはいけないことである。生命を担保にして求められる生活者が何を求めておられるか真剣に考えてほしい。家族の幸福の城しかないのであり、その幸福の城を不誠実や手抜きや、欠陥や未熟で対応してはいけないのである。
お客様に感動を与えてほしい。お客様に評価され、地域の方にも歓迎される工務店・ビルダーになってほしい。
住宅ビジネスを儲けるためのビジネスとして取り組むのはよい。しかし、ただ儲けるだけでは残念である。永続性のある儲けをしてほしい。儲けるという字は信者という字をくっつけたものである。信者をつくるためにはCS→CD→CT実現をやりきるしかない。
② 「魅せる現場コンテスト」入賞企業が輝いている
住宅産業塾主催の第8回「魅せる現場コンテスト」の入賞発表会を1月22日東京で開催した。コロナ禍の中でも積極的に参加した企業の挑戦物語である。このコンテストのレベルは高く、入選するだけでも、その該当する地域では軽くトップクラスになる。この現場きれい、魅せる現場をブランドになるようアピールしない手はない。
その中で、5年間の内、3回総合優秀賞を獲得すると特別扱いの「殿堂企業」として認定されるが、2020年度は愛知県江南市の「(株)波多野工務店」が見事にそれを果たした。すごいことである。
現場をきれいにするのは当然であるが、担当する人々の心もきれいになる。そうすれば「作業→仕事→志事」になりお客様への対応も良くなり、すべての品質が上がる。品質が上がれば、お客様の感動実現ができるようになる。そして善の循環が始まる。お客様が喜ばれ、その結果、会社の受注が増え業績も良くなる。良くなれば社員や働く人々への還元もできる。それらの人々の意識の高揚ができ、さらにお客様満足の実現に務める。この善の循環が会社の発展を約束する。地場に生きる工務店・ビルダーとしては「現場を商品、お客様を営業支援者に」できることが最高である。
参加された企業や挑戦されている企業には感謝しかない。嬉しいことにすでに6社が殿堂入りして計7社になる。2021年度も2社が挑戦する。
① 「完成した図面と完全な仕様書による事前発注」実践企業
現場きれいと同時にもうひとつ絶対に改善しなければならないのが「完成した図面と完全な仕様書による事前発注」である。これができれば革新の核ができる。これは何がなんでも挑戦して実現してほしい。
完成図書ができないものだから事前発注もできない。だからいつまでたっても現場が楽にならない。現場が混乱するし、監督も疲れる。挙句の果てクレームにつながることが多い。
完成図書は前工程が問題で、設計内容がなかなか決まらないことや仕様が決まらないことによるもので、これは仕組みや標準化がまずく、品質や生産性を落とすものである。そのため期限内に積算や発注ができなくなっているものである。
完成図書による事前発注ができれば、原価が明確になり、工程がはっきりし工期が守れる。内容が明確になっているために品質も良化する。当然違算もなくなっていく。また監督の労働時間も一人当たり一日2時間短縮できる。これは大きく、働き方改革に大きく貢献する。またびっくりすることだが、大工さんの生産性も上がる。今まで内容不明確のため現場での何回もの打ち合わせが余儀なくされてきたものがほとんどなくなる。大工さんの一日現場に滞在する時間は変わらなくても、大工実務の時間が増える。そのため工期の短縮につながり、大工さんの実入りも良くなる。監督も現場に行く回数や確認内容も鮮明になる。時間の余裕ができればお客様対応が向上し、CS実現も向上する。当然残・手直し工事0にもなり、お客様との心の葛藤がなくなり、爽快なコミュニケーションが出来上がる。
お客様が喜ばれる顔は最高である。また住宅ビジネスに携わる人々も楽しくなる。
(株)波多野工務店は2020年の一年間、完成図書による事前発注と、残・手直し工事0の引き渡しを実現した。本当に素晴らしい!
(2021年1月 25日 日本住宅新聞掲載)