1、工事の絶対遵守事項
設計と工事の連携とそれぞれの本来の業務の徹底を図る必要がある。
今、工務店業務の実践状況をみると、実にこの連携があいまいで、それぞれの業務も明確でない場合が多く、実践も中途半端なことが多い。
そのため現場は混乱し、お客様のCSも実現できていないし、利益も当然出ていない。
一日も早く設計による完成した図面と完全な仕様書の作成、それに基づく設計から工事への引継ぎを行い、確認したあと着工に入ることがベストである。
工事部門としての絶対遵守事項がある。
①事前発注、
②工事三大条件(工期厳守、残手直し工事0の引渡し、現場きれい)の徹底による良品質住宅の実現、
③報連相打(5回以上の立会いと週2回以上の連絡)による安心・納得・信頼の構築、
④魅せる現場の実現、
⑤近隣配慮の仕事の遂行である。
工事部門の業務遂行を円滑にさせる鍵は先行管理にある。
この先行管理を効果的に行うには職人・協力業者の巻き込みパートナー化が必要である。
先行管理に基づき職人のローテーション管理ができ、工事全体のスケジュール管理が徹底できる。
できれば職人による自主検査と監督による受け取り検査合格による支払いの連動を実施するとよい。これにより完全な引渡しの実施がスムーズにできる。
2、職人・協力業者への引継ぎ=事前発注の完全実施を
事前発注ができない限り強い工務店・ビルダーにはなれない。
事前発注できない要素は設計による完成した図面と完全な仕様書ができていないことによるものである。
図面が完成せず、仕様が確定せず、事前発注がなくてどうやって施工できるのであろうか?
これは羅針盤なしで荒海を航海するようなもので無謀としか言いようがない。
なし崩しにやる結果、努力しても、品質も工期も、そして原価も極めて悪くなるものである。
またそれだけでなくCS実現どころかお客様の不満足を誘発し、ろくなことはない。
完成した図面と完全な仕様書がなく、発注書もなくて職人・協力業者はどうすればよいのだろうか?
やれといわれればやるしかないのが現実であるが、実際には職人も協力業者もたまったものではない。
内容も金額も正確にわからず、施工完了してから、それが全額支払われるとよいが、もし支払わなければ不愉快になり、良い職人ほど離れてしまうことになる。
こういう不完全を続けて良い仕事ができるわけがない。
不完全な状態で施工を依頼する場合、後精算による支払い金額は当然のことながら大きくなり、違算が大きく利益を圧迫することになる。
事前発注をしないと良いことは何もない。どんなことがあっても実施できるようにしてほしい。
職人・協力業者への引継ぎにあたる事前発注なくして品質も工期も原価も薄いことを認識してほしい。
3、積算・発注システムの確立を
事前発注するためには積算しなければならない。
ところが、この積算基準のない工務店・ビルダーが圧倒的に多い。
業者から見積を取り集計をして積算であると思っている人がいるが、これは「ツミザン」であり、とんでもないことである。積算をするためには拾い出し基準と単価基準をつくらねばならない。
拾い出し基準は壁の芯々でやるか内法でやるかで大きく変わってくるし、ロス率をみるのかみないのかでもその差が大きく出る。
これらをきちんと決めて積算をしなければ誤差が大きすぎて原価が信頼できないものになってくる。
この拾い出し基準は当然のことながら、職人・協力業者とも確認して納得の線にて行うものである。
積算のもう一つが発注単価を決めることである。
単価の決め方もいろいろある。
定期的に見積をとって比較検討を加えて単価を確定するものや、ネットワークなどを利用して他社情報により単価修正を行うことなどがある。
いずれにしろ一工事物件ごとに度々見積を取ることは避けたい。
工務店・ビルダーは自社の積算基準を作成し、これに基づいて個別積算を実施し、この積算に基づいた発注を行う必要がある。
(2019年4月 25日・5月5日 日本住宅新聞掲載)