10月12日の夕刊紙日刊ゲンダイで、「新築戸建て好調の陰で施工不良が増加しているワケ」(民間の検査で8割の物件が)という記事が掲載された。「特に多かったのが、柱と梁の接合個所などへの金物の未設置と釘が正しく打たれていなかったケースとのこと。これは職人のつけ忘れや現場監督のチェックミスによるものがほとんど」とのこと。本当に悲しいことである。
このような欠陥住宅は今更ではない。住宅産業塾を起こした30年前も同じで、このような悪質な施工を断ち切ってほしいという願いからであり、プロの住宅会社として真摯に向き直してほしかったからなのだが、相変わらずのおそまつさだということである。
職人不足や、監督の技量不足がなせる業だが、これをやむを得ないと見過ごされたら困る。住まい手の「生命を担保にして借金をしてまで求める家族の幸福の城」である住宅を、プロの住宅会社が忙しいから仕方がないといえるのか!許されるものではない。未必の故意で詐欺犯罪に近いともいえる。
住宅会社の経営者も悪い。品質が悪く、欠陥住宅を提供してはいけないのが常識であるにもかかわらず、きちんと対応していないだけでなく、やむを得ない、仕方がない、何とかこなさなければならないという甘えた姿勢が許せない。他業界を含めて、この世で欠陥商品が許されるわけがない。
施工中の現場が汚いのも同じである。100円ショップのものでも汚いものはない。なのに何千万もする住宅を、プロの住宅会社が、プロの社員を使って、プロの職人が施工する、材料も新品なのになぜ現場が汚いのか?これは経営者から社員、職人に至るまで心が腐っているからだとしか言いようがない。これも悲しすぎる話である。
「ベテランの職人や現場監督のリタイア―によって、若手の職人にスキルが継承されていないことや、一人の現場監督が何か所も掛け持ちなどで十分なチェックができなかったことによる」が、住宅の専門会社がその対応を怠ってはいけない。
品質は絶対条件である。会社で品質基準を明確にし、それを標準化したうえで、正しい施工をする努力をしなければならない。それには品質基準を定め、品質チェック表を作成し、品質管理のやり方まで詳細に決め、実践トレーニングして、きちんとマスターしたうえで担当者として実務に当たらせるべきである。未熟な監督に標準化・システム化なしに責任を持たせて現場管理をやらせていることに問題がある。現場の工程の進度は分かるが品質基準や品質管理のやり方を知らない監督が多く、正しい品質管理ができないのが当たり前のことで、これは経営者に非があるものである。
この品質管理はベテランでないとできないと思っている経営者・幹部が多いが、勉強不足も甚だしいといえる。品質管理は難しくはない。建築の経験のない人材でも、女性でも品質管理はできる。なぜできないのかは簡単なことである。会社が、幹部が品質管理の標準化・システム化をしないことによるもので、若い監督や、経験の少ない人が単独でうまく現場をみることができないことに尽きる。
品質基準をつくり、その品質管理のやり方を決め、実際の現場で実践指導すれば、半年で使える人材に成長する。建築未経験の女性が素晴らしい品質管理マンになっている事例が多々ある。品質管理システムは幹部・ベテラン監督が作成すべきであるが、実践するのは一般社員であり、基準に基づいてきちんとトレーニングすれば安心レベルの品質管理ができる。
(2021年10月 25日 日本住宅新聞掲載)