コロナショックで受注が順調な企業が多かったが、今はコロナショック、ウッドショック、価格アップショック、資材不足ショック、職人不足ショックなどで、てんてこまいされていると思う。資材調達や、コストアップにどう対応するか、職人をいかに確保するかということなどで頭を痛めておられることと思う。またウクライナ問題が出てきて更に先行き不透明な状態になっていくので、今後勝ち残るために、いかに現状を乗り切るか、いかに競争力と付加価値をつけるかが最大急務となっている。
今最大の課題は、
① 一つめは原価アッ
プの吸収をどうするか?である。企業の内容によって異なるが、多くの企業の実態内容は1棟200~250万円、250~300万円当たり原価アップになっている。売価に反映して受注したものや、価格アップの覚書での一部吸収もあるが、すべてがうまく該当できていないのが実情である。これから決算で赤字になり大変困る企業が出てくるものと思われる。さらに返済資金でも困るところが出てくると思われますので、十分に実態把握とその後の対応に努力してほしい。
ところが今回の価格アップでそれほど痛手というまでに影響を受けていない企業も多くあるというのも事実である。大手では好調の企業もあり、企業力の差が大きく出ている。そのため商品や業務や組織などのすべての棚卸をして勝てる要素の「らしさ」構築に努めてほしい。
② 二つめはさらに原
価アップで困ることがある。原価アップをこれからの販売価格にどれだけ上乗せできるか?非常に神経を使うところである。単純に先ほどの原価アップを売価に上乗せしたら高くなりすぎて営業がギブアップすることが予想される。低価格で販売しているところはもともと利益が少ないために上乗せしたらとんでもない価格になり販売不振になり、住宅受注戦争の敗者になっていく。どこまで利益率の低下を認め、追加変更工事で少しの利益回復を図るのもあるが、なかなか難しいものである。そのため何とか売価にあまり影響させないようにするため、規格住宅を開発して急場を乗り越えようとしている企業も多くある。経営判断のしどころである。
ローコスト住宅会社にとっては今回の価格アップは深刻な問題で、対応できず、生き延びられない企業が多く発生するのではないかと危惧している。
4月・5月にもいろいろな資材の価格アップが発表されていることから、今後も価格アップの様相が大きく変わりそうにもないので難しい環境が続く。しっかりとコストの研究・整備をして、商品や対応方法など工夫して対応していってほしい。
期待通りの利益が取れる売価での販売は難しいが、いろいろ工夫して現状を乗り越えていってほしい。
今回の中でも比較的余裕があるのが、中高級の住宅会社といわれている。それは売価も高いわけだが、1棟当たりの利益額も大きいことにある。ローコスト住宅での1棟当たり利益額と大きく変わるため、影響があっても何とか乗り越えられる範囲であるといえる。
コストの明確化を
一般に、利益を上げるには①売上げを上げる、付加価値をつける、②仕入れを下げる、出ずるをおさえる、③効率を上げる~生産性を上げる、回転率を上げる、回収率を上げることが必要といわれている。コストを考える時には、①戦略としてのコストダウン(知恵)と、②戦術としてのコスト管理(先行管理)の二面を考える必要がある。しかし、その前提条件をクリアーする必要がある。先ずコストを明確にすることが絶対必要である。見積をとり、積み上げたものがコストだと誤解されている。これでは実際の原価がわかっていないともいえる。材料はいくらか、工賃はいくらか、また歩掛かりはいくらかなど皆目わかっていないのではないかと心配になる。情報をもたないため、業者の見積を信じるしかないのだが、これではコストが高くてどうしようもない。
工務店では標準仕様書が明確でないところが多く、積算基準(拾い出し基準と単価明細)もないところが多いのが実態である。真剣に経営をしているつもりでも大ザルになるのが現実。しかも悪いことには、着工前に完成した図面と完全な仕様が決められず、事前発注もされていないので、原価が高くなるのが当たり前(3~10%アップ=企業によって異なる)である。受注・売価・利益額が低ければ目も当てられない。先ずコストを明確にして、コスト対応などいろいろな取り組みを行ってほしい。
重要なコスト対応に続いて、今後の競争環境で勝ち残るには強さの特長である「らしさ」構築が特に重要である。必ず素晴らしいところがあるはずである。それを構築する一つの方法に、ベンチマーキングがある。優れた企業(同業・他業など)などから素直に学び、自社でいかにしたらうまく実践できるかを考え、経営資源の整備を行い、徹底して実践するものである。時間的にも費用的にも効果的に成果を生み出す手法である。仲間がいるはずである。助け合ってほしい。
(2022年3月25日 日本住宅新聞掲載)