10月29日、BM(ベンチマーキング・・・他社の良い点から学び実践し改善する)を重視し他社事例を学び自らの成長発展に活かす取り組みの一環である成長企業視察会として、大活躍中の兵庫県の㈱丸尾建築様の営業BM視察会を10月29日に開催し、全国より工務店経営者幹部・営業責任者を中心に約60名弱の会員様にお越しいただきましたのでその内容をお伝えいたします。
㈱丸尾建築様は、丸尾幸司様が社長就任後11年目を迎えました。就任以降、数々の変革を実行し、顧客満足を徹底しながら着実に成長されています。今は新築戸建市場の縮小が問題視されていますが、2024年には目標を大きく上回る飛躍的な受注成果を上げておられます。
今回の企画は、どうして、この難しい時期にそのような成果を上げることができたのか、その営業力の秘密を中心にベンチマーキングすることを目的とした営業BM視察会です。
営業装置の視察
営業施設の視察では、太子町にある本社と姫路支店を視察しました。
本社では、社長就任後間もない10年前に仕様を全面的に刷新したモデルと、別工法を採用したモデル2棟を視察。前者のモデルは、商品戦略を大きく変えそれからの丸尾建築の家を象徴するフラグシップのモデルとして機能していました。また、写真にあるようにおもてなしの一環として、ウェルカムボードは来場者全員のお名前の記載がありました。
姫路支店では社屋3階のショールームにて社長直々に初回面談における接客の流れをお伝えいただきました。初回面談トークは社長が自ら作り改修を続け、会社の理念や大事にしていること、さらに商品の特長、そして地域貢献活動に至るまで、「丸尾建築」を初回でしっかりと理解していただくための流れが明確になっています。そして、営業社員の皆様は、それを完全にマスターし社長の合格を得ないと初回面談の現場にも立てない、というほどに徹底して標準化しておられます。
さらに、2階ではおもてなし戦略の内容、さらに2棟のモデルハウスの視察を行いました。
実践発表にて
その後、会議室に移動し、営業担当者、マネージャ幹部、社長より実践発表をしていただきました。
まず入社2~3年目の営業担当者から、業務の標準化を図る管理システムの運用と、資料請求から来場誘致のための工夫について発表いただきました。
丸尾建築様では、ここ最近で業務フローを整備、さらに各業務内容の明確化、それを動画にして各自が学び同じように実践できるシステムを構築されました。そして、業務フローに基づいた進捗管理とともに、上司によるチェックを行うことで、若い社員でも業務の流れ、自分のやるべきことがスムーズに把握することができるようになっていました。
また、資料請求からの来場誘致に関する発表では、インサイドセールスツールを活用しながら着電率を高めるための準備や工夫、また電話でのヒアリング内容として、家族構成や実現したいこと、また住まいで困っていること、を聞き出し顧客情報を引き上げその顧客に合致した価値を提供することで来場を促す取り組みについてお話しいただきました。
行動パターンを分析した中で、非常に細やかに対応を考えておられました。電話をかけるタイミング、お伺いする内容、それらをきめ細やかに設定することで、来場率だけでなく契約までの商談の精度向上にもつながっているようです。
続いて、各営業マネージャ、営業課の取り組みと成果について発表いただきました。
まず営業一課の森様です。
森様は、自分の数字を追いながら部下の指導をしなければならない立場として、特に、部下の指導については、常に考えて提案する力、契約までの道筋を逆算した商談展開、そして仕事のスピード・効率の向上、また建築知識の向上のための勉強と、これらを通じて自ら考え行動できる人材へ成長を促しながら、全員で数字を達成する意識を高める工夫をお話しいただきました。
住宅産業塾では、マネージャの役割として①社長方針の翻訳者 ②仕事の設計者 ③問題解決者 任うとして ①目標達成 ②部下育成 ③燃える集団づくり と定義し、指導していますが、森様はまさにそれをマネージャとして体現しておられました。
さらに、営業二課の富井様からは、紹介契約率の向上、また顧客理解を徹底し、顧客ニーズにフィットした提案で信頼を得る、そのための準備をしっかり行い他社・他営業との差別化を図る、その取り組みをお伝えいただきました。
お客様のニーズをニーズを掘り起こすことで、提案の精度も」顧客満足度も高めることができます。そしてその取り組みは、お客様がお客様を呼ぶ、紹介へとつながっていきます。
さらに、営業部長の大橋様より、「情報の可視化」をテーマにお話しいただきました。
アンドパッドをはじめ各ツールから細かく情報を吸い上げ、BIを通じ数値をベースにした徹底的な情報共有と分析を行っておられます。各自が細かく情報入力を徹底すれば、それが膨大なデータとしてBIで一元化され、貴重な共有情報となります。各自が一元化された情報に触れられるようにすることで、各自の課題が明確になるだけでなく、間違いのない進捗管理ができるようになります。さらに、雑多な情報からあいまいな分析をするのではなく、はっきりと数値を根拠にした分析結果が見えてくるので、そこから様々な施策に落とし込むことができるようになります。分析結果を施策に落とし込み、PDCAを回すことができれば業務改善の劇的なスピードアップ、効率化が図られるようになります。また、情報の一元的な可視化はミス・ロス・ムダの排除にもつながっています。このようなDXをここ2年で進めたことで、中身の向上と合わさって大きな成果に結びついていました。
丸尾社長は11年前の就任当初から、棟数ありきでなく棟単価を上げる方向に舵を切り、新たな丸尾建築ブランドの構築に力を注がれてきました。
営業戦略の基本的な考え方は、強力な武器を1つ持つのではなく、戦える武器を沢山持ちそれらの集積、すなわち総合力で顧客に選んでいただくというものです。商品は特定の個性を際立たせるのではなく、素材、工法、設計も品質に至るまで、社長がこれは良いと思うものを標準とし、魅せる現場も、おもてなしも、地域貢献事業も、社長が必要と思う取り組みを着実に実践を積み重ねることを継続してこられました。
もしかしたら、その一つ一つは他社が優れている場合があるかもしれませんが、それが積み重なった「総合力」は抜きんでたNo.1で、他社が絶対真似できない圧倒的な差別化要素となる、という考え方を実践に移してこられ、棟単価の向上と売上向上を実現してこられました。
丸尾社長は、今年になって特に成果が花開いたことについて聞かれると、「本当に多分コツコツとしかやっていない。奇をてらうことは全然やっていない」ともお話しされました。
やってきたことは、社員に対し「とりあえずやろう」と口酸っぱく言い続け実践を促してきたこと、とも。
社員の皆様は、最初は大変で時間がかかったとしても、それを実践に移すことでお客様が実際に喜ぶことで、それが自らの喜びとなることで定着化、さらに「自分からこうしたい」と自発的な行動につながる、という成長の循環が生まれていました。
最後に社長より、この総合力を武器に、丸尾イズムを広げていく未来をお話しいただき、発表は終了いたしました。
まとめ
㈱丸尾建築様は、社長が自らお話しされるように、何か特別な手法により成果を上げたわけではありません。塾の提唱してきたことも含め一つ一つをコツコツと実践を通じて進化し続け、さらに顧客を大事に心の対応を磨いてきた積み重ねにより、その総合力が他社には決して真似できない「らしさ」として営業成績向上の成果に繋げられていることを、視察と発表を通じて学ばせていただきました。
2年前にも視察会を開催しましたが、特に、明確化された数字に対して責任を持ち、その目標を達成するために自ら工夫をする社員それぞれの成長は顕著に感じられました。また、中身が実践に裏付けられ明確になっているので、DX化の推進がさらに有効に機能し、業務のスピード感が増しているようでした。
参加された企業からは、特に2年前からの大きな進化に対する驚きの声や、社員の成長に対する感嘆の声が多く寄せられ、沢山の刺激をお持ち帰りいただきました。これらが各社の実践に生かされ、成果をだされることを願ってやみません。