照明器具はどこ?
優れた建築には照明器具の存在がないことが多い。
一般的な照明設計は、建築設計図を受け取ってその平面図に合わせて照明器具選定し配灯する。
ダウンライトやスポットライト、意匠系のペンダントライトやブラケットライトを選び明るさの確保と同時にインテリアデザインも考える。
展開図があれば立体的に考えることが出来るので照明設計の精度は上がる。
では、優れた建築の照明は?
というと、ダウンライトは出来るだけ小型でグレアレス。
配灯ピッチと配光角度を気にして、壁面に当たる光の質を考える。床面よりも壁面にフォーカスする。
壁の面積が大きければ大きいほど壁そのものが発光しているかのように見えるように壁面素材を気にする。
不快なグレアがないからこそ感じる「明るさ感」である。ここでとても大事なことは、壁面素材と光の関係性。
素材の色がライト系であれば光が反射して少ない光量(ルーメン)でも明るく感じる。
逆にダーク系であれば光は吸収され光量をふやしても明るさ感は確保できない。素材によって光の量は変わるという事。
空間ならこのくらいの光量というマニュアルでは解決できないことを意味する。
1畳あたり300~500ルーメンが基本とするマニュアルに頼るな!ということである。
目安として覚えておいても良いが、教科書通りにはいかないという事も覚えておいて欲しい。
特にダウンライトやスポットライトの場合、配光角度を決める必要がある。
これを間違えるとせっけく選んだ素敵な壁面素材の演出が台無しになりかねない。
光のムラが生じ壁面の違和感に繋がり、建築そのものの価値が低下することを意味する。
なんとももったいない話であるが、今もなおそのような現場は多々あるのも事実なのです。
では、こうならないためにはどうすればよいか?
自信を持って間違いがないのは、間接照明(建築化照明)を検討し、壁面素材の色はライト系を推奨すること。
但し、造作が伴うため、内装工事費の予算を確保する必要があるが、予算以上の価値を得られることは言うまでもない。
間接照明の場合、照明器具が見えない配灯計画が必要となるが、同時に光を仕込む位置によっても空間の表情が大きく変わることも忘れてはならない。